インフォメーション
| 題名 | 自律型組織をデザインする |
| 著者 | 中村文昭 |
| 出版社 | 同友館 |
| 出版日 | 2020年10月 |
| 価格 | 2,200円(税込) |
天災・人災など予測できない現象が現れやすくなっている現在において、経営理念に寄り添って、社員一人一人が現場で判断して行動できる組織が求められている。そうしたなかで、経営をデザインするための思考ツールである経営デザインシートの作り方・活用の仕方などを解説する。
引用:同友館
ポイント
- 現在または近未来の社会を表す言葉に「VUCA」「人生100年時代」「第4次産業革命」がある。
- 自立型組織とは「経営理念を拠り所に社員ひとりひとりまたはチームが各々現場で判断して行動する組織」である。
- 「チャレンジ、お客様に寄り添った、感謝の気持ち、社会貢献」といった言葉が使われていたら十中八九、従来型組織だろう。
サマリー
はじめに
外部環境の変化の激しいこれからの会社は、自律分散的かつ臨機応変な対応が取れるような人材や組織が求められる。
本書ではそれらを自立型組織と定義し、解説する。
なぜ自立型組織なのか
自立型組織が求められる背景
現在または近未来の社会を表す言葉に「VUCA」「人生100年時代」「第4次産業革命」がある。
2020年にはじまったコロナ禍はVUCAの時代を象徴する出来事であった。
天災・人災など予測のできない現象が現れやすくなっている状況を指す。
寿命が長くなったことによる社会変化を「人生100年時代」、AIなどの技術革新によるパラダイム変化を「第4次産業革命」と表現する。
人生100年時代では、企業は、働き手のニーズを受け入れ、柔軟な働き方のできる組織にすることが求められる。
一方で、第4次産業革命後の社会では、ルーチンワークはAIやロボットが担うようになり、人の役割は創造的な分野になると思われる。
企業はユーザーの存在ニーズを想定し、新しい価値を生み出せる人材活用の仕組みが求められる。
自立型組織とは何か
自立型組織とは「経営理念を拠り所に社員ひとりひとりまたはチームが各々現場で判断して行動する組織」である。
自立とは自分自身で立てた規範に従って行動することを言う。
自立型組織では、経営理念という目的を達成するために社員自らが規範を立て、そしてその規範に従い行動する。
本書における自立型組織の定義としては、「自立型の経営理念」「自立型人材」「自立型の組織運営」の3点を自立型組織の特徴とし、この3点が揃っている組織を自立型組織としている。
自立型の経営理念は、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」に分けて考える。
日本の会社にとってなじみのある経営理念は社是・社訓型であろうか。
このタイプの経営理念は創業の精神のように過去の伝統・考え(社是)と行動規範(社訓)でできている。
過去の歴史をつないでいくことが使命であり、どちらかと言えば過去思考の面がある。
これに対して自立型の経営理念は未来志向といえる。
ミッションは遠い未来を見据えており、ビジョンはミッション実現のためのマイルストーン的な役割を持っている。
こんなやり方ではうまくいかない
自立型組織と従来型組織の経営理念は異なる
経営理念にどんな言葉が使われているかで自立型組織か従来型組織かわかる。
「チャレンジ、お客様に寄り添った、感謝の気持ち、社会貢献」といった言葉が使われていたら十中八九、従来型組織だろう。
どんな会社でも使える無難な言葉が使われている。
背景には無難さをよしとする経営姿勢が読み取れる。
個性発揮より、礼儀作法や規律を評価する価値観が伝わってくる。
極端なことを言えば、従来型組織には経営理念は必要ない。
特にワンマン企業の場合、社長がすべての権限を持ちトップダウンで組織をコントロールするので、経営理念を必要とする場面がそもそもない。
スタートアップの時はどんな会社もワンマンである。
創業後しばらくは、強力なリーダーシップのもと、社長の示した明確な目標によって組織の諸活動を統合し事業を軌道に乗せる。
この時期は社長の個人的特性で行われることで機能し、その一体感、意思決定の速さ、行動の早さが、スタートアップ時には必要だ。
ところがある程度の組織規模や事業規模が拡大すると経営理念が必要になってくる。
組織が自律化する経営理念
能率的な管理を目的とした規則・手続き、および専門スタッフの導入とともに組織の官僚化が始まる。
同時に「官僚制の逆機能」が発生するようになる。
「官僚制の逆機能」とは規則や手続きの順守や専門化が進むことにより顧客中心のサービスや現場での柔軟な対応が少なくなることである。
この現象がさらに進むと規則を固守することが組織メンバーの目標に置き換わる。
その結果、組織全体よりも自部門の利益優先や自部門の専門分野以外に対する無関心など、組織への悪影響が大きくなる。
経営理念を必要とするのは、この「官僚制の逆機能」が現れたあたりからである。
自立型組織の経営理念は、ミッション、ビジョン、バリューでできている。経営理念づくりの際、「社員とともに作る」ことを奨励したい。
社員の共感する経営理念ができあがり、社員に浸透させる手間がかからない。
社員一人ひとりが発信者となるので、ステークホルダーや社会へも理念が広がりやすくなる。
おわりに
従来型組織も自立型組織もどちらが良い、悪いかではなく、外部環境の変化に合わせて柔軟に見直しを行っていくことが求められるのである。
From Summary ONLINE
本書は、これからの時代に求められる自立型組織について解説する一冊である。
本要約では、本書の「なぜ自立型組織なのか」「こんなやり方ではうまくいかない」の章より、内容をピックアップして紹介した。
本書では、経営デザインシートの作り方、経営変革キックオフ式のやり方、などたくさんのノウハウが紹介されている。
自立型組織を目指す経営者・企業幹部の方などにおすすめできる一冊である。