インフォメーション
| 題名 | 開業から3年以内に8割が潰れるラーメン屋を失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える 「してはいけない」逆説ビジネス学 |
| 著者 | 川田 利明 |
| 出版社 | ワニブックス |
| 出版日 | 2019年9月 |
| 価格 | ¥1,430(税込) |
脱サラをしてラーメン店を開こうとする人は後を絶たず、年間の出店数は3000店を超えるというデータがあります。それだけ競争が激しい世界で、新規オープンから3年以内潰れるお店は8割にも達すると言われています。
本書はさまざまな失敗を重ねながら、今年(2019年)で10年目を迎えた『麺ジャラスK』の店主であり、プロレスラーの川田利明さんが、現役時代に購入したベンツを3台売り払ってわかった〝俺だけの教訓〟を余すことなく披露。成功のための「してはいけない」逆説ビジネス学を辛口で伝えます。
「しょっぱなからこんなことを書くのもなんだけど、この本を読んで〝こんなに大変なら、やっぱりラーメン屋になるのはやめよう〟と思ってくれる人がいてくれたほうが、俺はいいと実は思っている。こんなに成功する確率が低いビジネスに、人生を賭けてチャレンジするなんて、本当に無謀なこと。チャレンジというより、これはもうギャンブルだからね」(著者より)
引用:ワニブックス
ポイント
- ラーメン屋を始めたきっかけは、壮大な夢ではなかった。開業資金の約1000万円は、毎月かかる固定費によって想像以上の速さで減っていった。「店を持つ」とは、「毎月支払い続ける責任を負う」ことでもあった。
- 営業時間が終わっても、休めるわけではない。休日も店へ行き、食材の確認や翌日の仕込みをする。食事も十分に取れず、現役プロレスラー時代より20〜30kgも体重が減ったという。健康面の負担も、開業前には想像していなかった現実だった。
- 本書には、ラーメン屋を始める以前のプロレス時代についても多く語られている。どんな経験も無駄にはならない。人生の伏線は、後になって初めて意味を持つことがある。
サマリー
失敗は、夢を諦める理由ではなく、現実を知るための教材だった
「会社を辞めて、自分の店を持ちたい。」
そんな夢を抱く人は少なくない。
テレビでは脱サラして人気ラーメン店を開業し、行列店へと成長する物語が紹介される。
しかし、それはごく一部の成功例に過ぎない。
本書は、その華やかな物語とは真逆の視点から書かれた一冊である。
著者は元プロレスラー。
リングを降りたあとラーメン店を開業し、約10年間経営を続けてきた。
しかし本人は「成功した経営者ではない」と断言する。
だからこそ、これまで出版の依頼はすべて断ってきたという。
そんな著者が筆を執った理由はひとつだった。
「成功談ではなく、失敗談を書いてほしい。」
夢を追う人が遠回りをしないために、自分の経験を反面教師として残したい。
その思いから生まれたのが本書である。
「好き」だけでは乗り越えられない現実
ラーメン屋を始めたきっかけは、壮大な夢ではなかった。
長年続けてきたプロレス生活のなかで、尊敬する先輩たちが相次いで亡くなり、自分の将来を真剣に考えるようになった。
そして借りた物件が、たまたまラーメン店の居抜きだった。
「これなら始められるかもしれない。」
そう思って選んだ道だったという。
しかし開業資金として用意した約1000万円は、想像以上の速さで消えていった。
店舗設備だけでは終わらない。
近隣住民への配慮から借りることになった駐車場代、細かな備品、設備の修理費、予想外の維持費。開業前には想像していなかった支出が次々に積み重なる。
しかも、ローンを返済し終えても安心ではない。
駐車場代や家賃、水道光熱費など、毎月必ず発生する固定費は変わらないからである。
「店を持つ」ということは、「毎月必ず支払い続ける責任を持つ」ということでもあった。
チェーン展開は夢物語かもしれない
著者も開業当初は、店舗展開や移転を考えていた。
しかし現実は甘くなかった。
初期投資が予想以上に膨らみ、利益を新しい投資へ回せる余裕などまったく生まれなかったのである。
ラーメン業界では、テレビで取り上げられるようなチェーン展開を実現する店はほんの一握りだ。
だから著者は、本書を読む人へ率直に伝える。
「夢を持つことは大切だ。しかし夢を持ちすぎてはいけない。」
過度な期待は、現実との落差を大きくし、挑戦そのものを苦しいものへ変えてしまうからである。
支援を受けるか、自分で背負うか
プロレスラー時代の知名度もあり、
「資金を出すから店を出さないか」
というスポンサーの話もあったという。
著者自身も、もし資金援助を受けていれば、もっと早く経営が安定したかもしれないと振り返る。
実際、本書では読者に対して、信頼できるスポンサーがいるなら支援を受ける選択も十分に価値があると勧めている。
一方で著者は断った。
理由は、お金が人間関係を壊すことを恐れたからだった。
成功したあと利益配分でもめたくない。
経営の自由を失いたくない。
その選択をした結果、遠回りになった部分もあったと率直に認めている。
成功者の武勇伝ではなく、「あの時こうしていれば」という後悔まで隠さず語っているところに、本書の誠実さがある。
定休日は存在しない
店の定休日は火曜日。
しかし著者には休みがない。
休日も店へ行き、食材を確認し、翌日の仕込みを進める。
特に強いこだわりを持っているのがメンマだった。
市販品を仕入れれば圧倒的に安く済む。
しかし著者は乾燥メンマから三日間かけて仕込み、自分だけの味を作り続けている。
経営だけを考えれば効率は悪い。
採算だけなら、やるべきではないかもしれない。
それでも、「自分だけの一杯」を作りたいという思いだけは譲れなかった。
利益だけでは測れない価値も、店づくりには存在するのである。
想像以上に過酷な毎日
営業時間が終われば休めるわけではない。
ランチ営業と夜営業の間も、閉店後も、仕込みが続く。
朝から深夜二時過ぎまで働く生活。
朝食も昼食も食べない日が珍しくない。
結果として、現役プロレスラー時代より20〜30kgも体重が減ったという。
リングに立たなくなっても、膝や腰の痛みは消えない。
体は確実に衰えていく。
健康面の負担もまた、開業前には想像していなかった現実だった。
人件費より高かった機械
近年問題となっているバイトテロ。
著者も従業員との契約を見直し、最終的には自動券売機を導入した。
ところが、この券売機が想像以上に高額だった。
軽自動車が一台買えるほどの価格。
さらに苦労したのは設定作業だった。
メニュー登録よりも暗証番号設定や管理機能の登録に時間を取られ、営業準備は思うように進まない。
「機械を導入すれば楽になる。」
そんな単純な話ではなかったのである。
プロレス時代が教えてくれたこと
本書には、ラーメン屋以前のプロレス時代についても多く語られている。
全日本プロレスの練習は非常に厳しく、多くの新人が途中で辞めていった。
著者は三年間もちゃんこ番を担当し、後輩ができなかったという。
給料は手取り四万五千円。
それでも毎日料理について考え続けていた。
「あの食材に、この味付けをしたらどうなるだろう。」
この積み重ねが、後にラーメン作りへとつながっていく。
どんな経験も、無駄にはならない。
人生の伏線は、後になって初めて意味を持つことがある。
From Summary ONLINE
本書は、「ラーメン屋になる方法」を教える本ではない。
むしろ、「ラーメン屋になる前に知っておいてほしい現実」を伝える本である。
開業資金の重さ、終わらない固定費、体力の消耗、人材の問題、設備投資、終わりの見えない仕込み。
夢だけでは乗り越えられない現実が、包み隠さず描かれている。
しかし、不思議と読後に夢が消えることはない。
なぜなら著者は「だから挑戦するな」とは一度も言っていないからである。
現実を知ったうえで、それでも挑戦したいと思えるなら、その夢は本物だ。
本書は成功者の自慢話ではなく、失敗を未来の誰かの財産へ変えようとした一人の挑戦者の記録である。
夢を追う人ほど、成功談より先に読んでおきたい一冊だ。