インフォメーション
| 題名 | 図解入門ビジネス 最新 コンプライアンスの基本と実践がよくわかる本 |
| 著者 | 後藤 慎吾 |
| 出版社 | 秀和システム新社 |
| 出版日 | 2026年2月 |
| 価格 | 1,980円(税込) |
本書は企業の担当者向けにコンプライアンスについて解説する入門書です。近年、企業不祥事などでコンプライアンスの問題が問われる中、企業の法務部門やコンプライアンス部門では正しい知識を理解しておくことが急務となっています。そこで本書ではコンプライアンスの基本的な考え方や関連する法知識、企業に求められる対応について解説。この1冊で押さえておきたい知識がやさしく身につきます。
引用:秀和システム新社
ポイント
- 著者が強調するのは、コンプライアンスとは法令を暗記することではなく、企業で働く一人ひとりが日々の業務で適切な判断を下すための「物差し」を身につけることだ。
- コンプライアンスを実践するためには、企業活動に関わる法令の目的や基本的な考え方を理解することが欠かせない。
- 著者は、法律を個別に暗記することではなく、「その法律は何を守るために存在するのか」を理解することが、日々の業務における適切な判断につながると述べている。
サマリー
企業にとってのコンプライアンスとは
著者は弁護士として20年以上にわたり、コンプライアンス分野に携わってきた。
「法の不知はこれを許さず」という格言が示すように、法令を知らなかったことは免責の理由にはならない。
企業にコンプライアンス違反が生じれば、法的責任を負うだけでなく、ステークホルダーからの信頼の失墜や売上の減少、取引関係の解消など、経営に深刻な影響を及ぼし、最悪の場合は倒産に至ることもある。
著者が強調するのは、コンプライアンスとは法令を暗記することではなく、企業で働く一人ひとりが日々の業務で適切な判断を下すための「物差し」を身につけることだ。
その考え方は、多くの企業にも浸透している。
例えば、トヨタ自動車はコンプライアンスについて、「法令だけでなく、社会常識や企業倫理に照らし、さまざまなステークホルダーの期待に応えながら、公正に企業活動を行うこと」と位置付けている。
ステークホルダーとは、顧客や取引先、従業員、地域社会、株主など、企業と利害関係を持つ人々や組織を指す。
持続的な成長には、こうしたステークホルダーとの信頼関係が欠かせない。
だからこそ、コンプライアンスは単なる法令遵守にとどまらず、社会からの期待に応え続けるための行動指針として捉える必要がある。
本書は、法令の知識だけでなく、変化する社会の中で企業人に求められる判断の軸を学べる一冊である。
企業は人権にどのように対応すべきか
近年、企業には人権を尊重した事業活動がこれまで以上に求められている。
著者は、憲法を「人権尊重の考え方をビジネスに浸透させる」ための重要な役割を担うものと位置付けている。
企業の人権尊重に関する国際的な基準となっているのが、2011年に国連人権理事会で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」である。
この指導原則は、①国家の人権保護義務、②企業の人権尊重責任、③救済へのアクセスの3つを柱としている。
日本政府もこの指導原則を支持し、2022年には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定した。
著者は、企業がまずこのガイドラインに沿って取り組むことが重要であると述べる。
特に重要なのは、人権尊重の対象を自社やグループ会社だけでなく、サプライチェーン全体へ広げて考える点である。
企業には、人権方針の策定や人権デュー・ディリジェンスの実施、自社が人権への負の影響を及ぼした場合の救済などが求められる。
これらを経営陣や従業員、サプライヤーなどの取引先と連携しながら継続的に進めていくことが重要である。
人権尊重は社会的責任を果たすためだけではなく、企業の信頼を高め、経営リスクを低減するためにも欠かせない取組であると著者は説いている。
コンプライアンスを支える法令
コンプライアンスを実践するためには、企業活動に関わる法令の目的や基本的な考え方を理解することが欠かせない。
例えば、民法は契約や財産、損害賠償など、企業活動の基本ルールを定める法律である。
契約を誠実に履行することは、取引先や顧客との信頼関係を築くうえで重要な基盤となる。
一方で、「契約自由の原則」があるものの、その自由は無制限ではなく、信義誠実の原則に基づき、相手の利益を不当に害する契約や権利行使は認められない。
そのため、企業活動では他者の権利や利益を侵害しないよう適切に行動することが求められる。
また、従業員が業務上の不法行為によって他者に損害を与えた場合には、本人だけでなく企業も損害賠償責任を負う場合がある。
著者は、こうした責任を理解することが、コンプライアンス意識を高めるうえで重要であると述べている。
本書では、このほかにも刑法、消費者法、知的財産法、独占禁止法、労働法、個人情報保護法など、企業活動を支える主要な法令について、それぞれの目的や基本的なルールを解説している。
これらの法律は、契約や消費者、知的財産、働く人、公正な競争など、守る対象は異なるものの、いずれも企業活動の公正性と社会からの信頼を支える役割を担っている。
著者は、法律を個別に暗記することではなく、「その法律は何を守るために存在するのか」を理解することが、日々の業務における適切な判断につながると述べている。
会社のしくみで不正を防ぐために
本書の最終章では、企業経営に重大な影響を及ぼすコンプライアンス違反のリスクを低減するため、ガバナンス、内部統制、内部通報制度について解説している。
ガバナンスとは、コーポレートガバナンスの略称であり、企業を適切に統治するための仕組みである。
コンプライアンスを含むリスクの回避や不祥事の防止といった「守り」の役割に加え、健全な企業家精神を育み、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指す「攻め」の役割も担っている。
著者は、ガバナンスは制度を整えるだけでは十分ではなく、自社の資本構成や規模、事業特性に応じた実効性のある仕組みを構築することが重要であると説く。
さらに、内部統制や内部通報制度を適切に整備・運用することで、不正を未然に防ぎ、コンプライアンス違反のリスクを低減する組織づくりについて解説している。
コンプライアンスは、一人ひとりの意識だけで実現できるものではない。
適切な判断を支える仕組みを整え、その「物差し」を組織全体へ浸透させることが、社会から信頼される企業づくりにつながるのである。
From Summary ONLINE
コンプライアンスというと、法律やルールを覚える難しい分野という印象を持つ人も多いだろう。
本書の一番の魅力は、読者が抱きやすい疑問に答える形で解説が進み、表や図解も豊富に用いられているため、専門知識がなくても理解しやすい点にある。
また、法令の知識を学ぶだけでなく、「なぜその法律が必要なのか」「企業はどのように判断すべきか」という考え方まで丁寧に学べる。
コンプライアンスを基礎から学びたい人はもちろん、管理職や実務担当者など、企業活動に携わるすべての人におすすめしたい入門書である。