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【BAR90’s 90年代J-POPで人生を再起動する夜】

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インフォメーション

題名BAR90’s 90年代J-POPで人生を再起動する夜
著者権藤将輝
出版社舫知社
出版日2026年5月
価格1,650円(税込)

登場人物

・傘木了(かさき りょう)
「BAR90’s」のバーテンダー。ある楽曲を流すことで、客をその曲が流れていた時代へと誘う不思議な力を持つ。

・近藤蒼佑(こんどう そうすけ)
売れない小説家。新人賞には何度も応募しているものの受賞経験はなく、将来への不安を抱えている。妻と娘を支えたいという思いと現実との狭間で葛藤する。

・水沢静(みずさわ しずか)
交際相手との別れに怒りを募らせる女性。BAR90’sで過去へ戻り、中学生時代の忘れられない出来事と向き合うことになる。

・塔野さやか(とうの さやか)
高校時代の同級生・菊山かんなと同窓会帰りにBAR90’sを訪れる女性。学生時代に教師へ反発した出来事を振り返る。

・田宮慎吾(たみや しんご)
傘木のかつての同級生。深い悩みを抱えたまま傘木と再会し、BAR90’sで昔話をする中で自身の過去と向き合っていく。
ほか

あらすじ

※一部、ネタバレを含みます。

※本記事は要約記事ではなく、自身の言葉であらすじ及び感想を書いたものです。

空も飛べるはずだったのに

近藤蒼佑は売れない小説家だ。

これまで何度か小説の新人賞に応募したものの、受賞経験はない。

フリーライターとしてはそこそこ仕事に恵まれているが、先行きは不透明。

娘も生まれ、このままでいいのかと焦りを抱えていた蒼佑は、「取引先との会食がある」と妻に嘘をついて街へ出た日、見慣れないバーを見つける。

「BAR90’s」という看板が掲げられたそのバーに入ると、バーテンダーの傘木(かさき)が迎え入れてくれた。

彼は「ある音楽を流すと、お客様を過去への旅へと誘うことができる」と不思議なことを口にする。

なんでも、タイムトラベルのような形で、その楽曲がリリースされた時代へ戻ることができるというのだ。

傘木はそれを「寝ている時に見る夢のようなもの」だと表現する。

傘木の言葉を半信半疑で聞いていた蒼佑だったが、お香の香りが漂うと次第に眠気に襲われる。

そして気がつくと、小学生の頃の夏の日に戻っていた。

転校先になじめず孤独を感じていた彼にとって、心の支えとなっていたのは、親切な同級生・愛子の存在だった。

蒼佑は彼女と交わした「ある約束」を思い出し……

踊る君に狂った女

水沢静は怒っていた。

交際相手との別れに直面していたからだ。

もともと2人の関係は公言できるものではなく、静はこの際すべてをぶちまけてやろうかと、怒りではらわたが煮えくり返っていた。

そんな中、静は「BAR90’s」を見つける。

吸い込まれるように店へ入ると、バーテンダーの傘木が出迎えた。

傘木が流したのは、globeの名曲。静にとってはあまり良い思い出のない曲だったが、お香の香りとともに意識は過去へと引き戻されていく。

戻った先は中学生だった頃。静は同級生から万引きの手口を教えられ、実行するかどうかの瀬戸際に立たされていた。

一度は踏みとどまるものの、結局万引きしてしまった静。

数日後、不審に思った母から問い詰められた静は、思わず「不倫なんて恥ずかしいことしたお母さんに言われたくない」と言ってしまい……

輝き忘れた私たち

塔野さやかは黙っていた。

隣には、高校時代の同級生・菊山かんながいる。

同窓会の帰り、電車の遅延で足止めを食らった2人は、「最近、ある政治家がお忍びで通っていたバーが近くにある」というさやかの提案で、「BAR90’s」を訪れることにする。

高校時代、さやかとかんなは「どちらが可愛いか」と周囲から比べられ、お互いを意識し合う関係だった。

目立つ存在だった2人は、教師から目をつけられることも多く、夏休み明けには髪色が不自然に黒いという理由で、さやかだけが厳しく注意を受けた。

かんなも同じような髪色だったにもかかわらず、自分だけが注意を受けたことに悔しく思うさやか。

そして、以前から担当教員の指導に納得できなかったさやかは、教師への反発として「ボイコット」を計画する。

しかし、その計画は失敗に終わり、さやかは生徒指導室に呼び出され……

逃避行ノムコウ

田宮慎吾は動揺していた。

胃の辺りがムカムカし、道に倒れ込むと、男性が助けてくれた。

よく見ると、その男性はかつての同級生・傘木だった。2人は突然の再会に驚く。

動揺する田宮を落ち着かせるため、「少し昔話でもしよう」とBAR90’sへ案内する傘木。

昔話に花を咲かせるうちに、傘木が持つ「不思議な力」の正体が明らかになっていく。

さらに、田宮が胸の内に抱えている大きな悩みも、傘木にはお見通しで……

ライターのコメント

傘木がなぜ、その人の記憶を呼び覚ますことができる曲を選べるのだろうと思っていたのだが、その理由が後半で明らかになり、納得感をもって、読み進めることができた。

さまざまなタイプの主人公が登場する短編と、懐かしの楽曲を楽しめるため、飽きることなく最後まで読むことができる一冊だ。

私自身は90年代の終わりに生まれたため、作中に登場する90年代の曲のほとんどは生まれる前の楽曲である。

だが、作中に出てくる曲を含め、90年代の曲は懐かしさを感じるメロディーばかりで、自分にとっても「懐かしい」と思える曲ばかりだ。

私自身、もしBAR90’sに行ったら、どんな音楽をかけてもらえるのだろうとワクワクした。

昔懐かしい音楽が好きな人や、90年代のポップスが好きな人に是非おすすめしたい。

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