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【GPIF 世界最大の機関投資家】

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題名GPIF 世界最大の機関投資家
著者小幡 績
出版社東洋経済新報社
出版日2014年7月
価格1,760円(税込)

危うし、年金財政。130兆円の運用資産改革はアベノミクスの救世主にはならない。
2014年4月までGPIFの運用委員を務めていた著者が、知られざる世界最大の機関投資家の全容と、
あるべきGPIF改革について説く、緊急提言の書。

安倍政権が株価引き上げのネタとしてGPIF改革を利用したかどうかは議論しません。そんなことはどうでもいいのです。大事なことは、GPIFというものの存在を、国民が突然意識したのですが、それが何かもどのようなものかもまったく知らない。そして、政権はそのGPIFを大きく変えようとしている。しかも、まさにいますぐに、です。これは危険です。私は4月22日までGPIFの運用委員というものをやっていました。運用委員を運良く退任して、ある分野の守秘義務は依然あるものの、自由に記述できる立場にある私が、いまできることは、GPIFの理解を少しでも幅広く多くの人と共有することだと思うのです。したがって、理解が浅く、誤りもあるかもしれませんが、とにもかくにも、全力でこの本を緊急出版することにしたのです。  (「まえがき」より抜粋)

引用: 東洋経済新報社

ポイント

  • GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは、日本の公的年金の積立金を運用・管理している機関である。GPIFは、この巨額の資金を長期的かつ安定的に運用し、将来の年金給付を支える役割を担っている。
  • GPIFは公的年金制度を支える組織であるため、一般の投資ファンドのように収益の最大化だけを追求することはできない。著者は、この制約こそが「公的年金制度のくびき」であると指摘する。
  • 著者は、年金資産の運用は政治ではなく専門家の判断に委ねるべきだと主張する。政治的な思惑が運用方針や人事に影響を及ぼせば、中立的で長期的な運用が損なわれる恐れがあるためである。

サマリー

GPIFとは何か

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とは、日本の公的年金の積立金を運用・管理している機関である。

GPIFの特徴は、公的年金制度の中で生じた積立金を運用している点にある。

積立金とは、これまで加入者が支払った年金保険料の総額が、受給者へ支払われた年金額を上回ることで生じた資金のことである。

2014年3月末時点では、この積立金は約130兆円に達していた。

GPIFは、この巨額の資金を長期的かつ安定的に運用し、将来の年金給付を支える役割を担っているのである。

年金制度とGPIF

まず、GPIFが最終的に利益をもたらすべき相手は、国民全体や年金加入者である。

一方で、GPIFに運用を依頼しているのは厚生労働大臣だ。

政府は年金保険料を集め、年金を支払った後の積立金をGPIFに託して運用させている。

そのため、GPIFの「真の顧客」は国民であるが、「直接の顧客」は厚生労働大臣だといえる。

ここで難しいのは、厚生労働大臣は顧客であると同時に監督官庁でもあるため、上司としての立場も持っていることである。

上司と顧客が同じ組織である場合、適切なガバナンスが働きにくくなる可能性がある。

GPIFにおけるガバナンスとは、国民やその代理人である厚生労働大臣が、GPIFの運用状況を監視し、適切な運用が行われるよう働きかける仕組みのことである。

このように、GPIFには「顧客」と「監督者」がともに厚生労働大臣であるという特徴がある。

そのため、GPIFが国民の利益のために適切な運用を行っているかを、どのように監督し評価するかが重要な課題となる。

公的年金制度のくびき

GPIFは厚生労働大臣が定める中期目標に基づき、基本ポートフォリオと呼ばれる資産配分方針を策定しており、その運用には、「長期的な視点から安全かつ効率的に行うこと」が求められている。

しかし、GPIFは公的年金制度を支える組織であるため、一般の投資ファンドのように収益の最大化だけを追求することはできない。

著者は、この制約こそが「公的年金制度のくびき」であると指摘する。

日本の公的年金は、現役世代が受給世代を支える賦課方式を基本としているため、GPIFには高い収益性よりも、将来の年金給付を支える安定的な運用が求められるのである。

GPIFは本当に必要か?

著者は、「本来であれば国民が年金運用のリスクや方針について意思決定すべきだ」と指摘する。

しかし、多くの国民はその必要性や運用の意味を十分に理解していない。

そのため、年金積立金をGPIFで運用する意義そのものを問いかけているのである。

GPIFの究極の改革案としては廃止論もあるが、積立金を加入者へ返還するには、誰にいくら返すのかという問題が生じる。

また、公的年金は賦課方式を採用しているため、個人が自ら老後資金を運用しなければならなくなる。

著者は、個人投資には限界があり、多くの人にとって効率的な資産運用は容易ではないと指摘する。

そのため、GPIFによる大規模で専門的な運用には一定の意義があると考えているのである。

リスクとの向き合い方

著者は、国民がそれほど高いリスクを求めているわけではなく、安全かつ効率的な運用を望んでいると考えている。

これを機に、私たちは自分たちの年金が委託運用されているという事実を改めて認識すべきだろう。

そもそも、リスクがあるのは株式だけではない。

国債にもリスクは存在し、運用されている以上、すべての資産は「リスク資産」なのだ。

さらに現金であっても、インフレによって価値が目減りするリスクを抱えている。

人生と同様に、経済活動も常にリスクと向き合いながら成り立っているのだ。

著者は、「このような議論を重ねることで、国民のリスク許容度が高まる可能性がある」と語る。

十分な議論を経たうえで国民の意識が変化するのであれば、それは大きな進歩といえよう。

それは国民にとっても、資産運用にとっても、そして年金制度にとっても望ましいことである。

政治的独立性

著者は、年金資産の運用は政治ではなく専門家の判断に委ねるべきだと主張する。

政治的な思惑が運用方針や人事に影響を及ぼせば、中立的で長期的な運用が損なわれる恐れがあるためである。

例えばアメリカでは、大統領が金融政策に介入することはタブー視されている。

それが緊急事態であってもである。

著者は、GPIFについても日本銀行に匹敵する独立性が必要であり、投資方針や基本ポートフォリオに政治が介入すべきではない。

そして、政治からの独立性を確保することこそが、GPIFの制度設計において最も重要であると主張しているのである。

GPIF改革私案

著者は、利回りの最大化よりも、将来の年金給付を安定して支えることを重視した運用のあり方を提案している。

その考え方の特徴は、株価の値上がり益だけに頼るのではなく、債券の利息や不動産収入など、安定した収益を重視する点にある。

また、短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期保有を前提とした運用によってリスクを抑えることを目指しており、これまでとは異なる視点から資産配分を考える必要があると述べている。

年金資産の運用は、短期的な政治判断に左右されるべきではなく、長期的な視点と国民的な理解のもとで行われるべきなのである。

From Summary ONLINE


本書は、日本の公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の実態と課題を解説している。

これまで、年金がどのように運用されているのか知らなかった。

年金資産は国民の財産であるため、私たちはもっとこのことに目を向け、監視していかなくてはならないと感じた。

著者が最も警鐘を鳴らしているのは、政府が株価対策や経済政策(アベノミクス)の手段として、GPIFが運用する年金資産を利用することの危険性である。

そのため、短期的な政治的目的に左右されることなく、長期的な視点から独立性と透明性を確保した運用が求められるのだ。

年金問題を自分とは無関係な話として捉えるのではなく、日本社会全体の課題として考えるきっかけを与えてくれる一冊である。

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