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【素人校長ばたばた日記】

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題名素人校長ばたばた日記
著者川田 公長
出版社【発行】三五館シンシャ/【発売】フォレスト出版
出版日2025年12月
価格1,430円(税込)

 

 「県立高校を経営する仕事」
保護者と生徒が知らない
学校の舞台裏
――学校経営はつらいよ


本書はある日突然、なんのビジョンも持たないままに県立高校の校長となった私の2年間の奮闘記である。それまで33年間、地方公務員として県庁に勤めていた私にとって高校校長への異動は青天の霹靂であり、実際に勤務してみるとそこはまるで異世界であった。
――その仕事の内実を、本書では余すところなく描いてみたいと思う。

もくじ

まえがき———県庁職員の「異世界転生」物語

第1章 ある日突然、校長に
某月某日 教員免許、持ってません:人事異動
某月某日 初訪問:学校が私を拒んでいる!?
某月某日 校長室ひとりぼっち:2つの「組織目標」
某月某日 奇妙なシーン:始業式、校歌斉唱
某月某日 気まずい時間:校長室清掃とPTA
某月某日 教頭の地獄、校長の孤独:管理職、悪戦苦闘
某月某日 不倫注意:新人教員への講話
某月某日 激昂:掴み合いのケンカ
某月某日 トラブルメーカー:「みんなが迷惑しているんですよ」
某月某日 悩みの種:プール、ひと夏100万円

第2章 甲子園に出れば学校が変わる!?
某月某日 根性なしの就職活動:県庁で働く
某月某日 慎ましやかな要望:学校運営会議の話し合い
某月某日 炭酸飲料を考える:校内自販機
某月某日 2泊3日訪韓記:「化粧をしないように」
某月某日 告発:「言うことを聞かないなら…」
某月某日 目指せ甲子園:県大会、開幕
某月某日 パワハラ監督:球場中に響きわたる大声で
某月某日 チーム強化策:新コーチを獲得せよ
某月某日 コーチ失格:ヒアリングでの希望は通る?
某月某日 エアコンは贅沢か?:熱中症になりかける生徒
某月某日 クラッシャー:校長VS保護者

第3章 学校経営はつらいよ
某月某日 定員割れ:受験シーズン到来
某月某日 学級減:教育振興課からの突然の通告
某月某日 〝ある組織〟の存在:夏の事件
某月某日 校則はなんのためにある?:学校は理不尽を学ぶ場か
某月某日 猛反発:紛糾する職員会議
某月某日 ファッションショー:文化祭&体育祭
某月某日 やりがい:成長を感じる瞬間
某月某日 首を切る:なぜ非正規教員が増えるのか
某月某日 人を見抜く:教員採用面接
某月某日 夢に向かって?:就職指導の苦労
某月某日 ミッション達成:〝変な校長〟の影響

第4章 職員室、保護者に言えない話
某月某日 いじめ事案:「いじめ」と「いじり」の境界線
某月某日 抵抗勢力:部活動の再編
某月某日 撤去:歴代校長の写真
某月某日 リストカット:学校外の困難をどう支援するか
某月某日 ジェンダーレス対応:女子用ズボンを導入する
某月某日 異動してもらえますか?:教員の承諾を取る
某月某日 卒業式:晴れがましくて切ない
某月某日 3月の学校:新年度に向けて
某月某日 校長最後の日:予想もしない事態

あとがき――一炊の夢

引用:フォレスト出版

ポイント

  • 校長先生の仕事のひとつには、校則の改正がある。外部からやってきた素人校長である著者は、一部教師陣からの反発を受けながらも、生徒に「できる」権利を与えようと校則の改正に踏み切った。
  • 校長先生の仕事のひとつには、教員の人事がある。中でも非正規職員の採用はその役割が校長に一任されているため、年度末になると多くの校長が頭を悩ませながら人材獲得に奔走している。

サマリー

音声で聴く

はじめに

『「職業」と「人生」を読む!ドキュメント日記シリーズ』の一冊として出版された本作。

このシリーズでは毎回、交通誘導員やケアマネジャー、大学教授などさまざまな職に就く人物を著者として招き、世間に知られていない各職業の実態をつまびらかにしている。

本書は、数多ある職業の中でも多くの人にとって身近であり、しかし具体的な仕事内容はほとんど知られていない「校長先生」を題材に執筆されている。

さまざまな出来事に至る過程が著者本人や関係者それぞれの心理変化とともに描写されているため、まるでノンフィクションの小説を読むような気持ちで「校長先生」という職業に対する知見を深めていくことができる。

「素人校長」とは

著者は地方公務員としてⅩ県庁に入庁して33年のベテラン県庁職員。

長いキャリアのうちの数年は教育関係の部署に勤めていたこともあるが、学校現場での勤務経験はゼロ。

あるとき、そんな著者のもとに知らされた異動の内示は高等学校の校長を務めるというもの。

あまり知られていないが、学校教育法施行規則が改正されたことで2000年度から校長や教頭は教員免許がなくてもその役職に就くことができるようになっていたのだ。

こうして著者は、なんのビジョンも持たないまま素人校長として県立のとある商業高校に赴任することとなった。

校長先生の仕事①〜校則を変えよ〜

著者が校長として赴任することになった海斗商業高校は、生徒指導が厳しいことで有名な学校だった。

教師陣の中にはこのいささか厳しすぎる校風を伝統として大切にしている者もいたが、海斗商業高校はある年の入学試験で定員割れとなってしまう。

校長を務める著者は、そんな学校の現状を改善すべく、生徒に「できる」権利を与える校則の改定に乗り出した。

校則を読み返す中で著者が見つけた改正すべき項目と改正案は以下の通り。

1,女子生徒の前髪は眉にかからないようにすべき
→改正案:ヘアピンで留め、眉にかからないようにすることができる

2,夏季には夏服、冬季には冬服、それ以外は合服を着用すること
→改正案:(制服の範囲内で寒暖に応じて)組み合わせて着用することができる

3,靴下については女子は黒や紺色のハイソックス、男子は白色、黒色、紺色の靴下を着用すること
→改正案:男女ともに白・黒・紺色の無地またはワンポイント、ワンラインの靴下

4,二種類ある通学バッグ(ファーストバッグ、セカンドバッグ)について、セカンドバッグは必ずファーストバッグと併用し、単独では使用しないこと
→改正案:ファーストバッグまたはセカンドバッグを使用することができる

著者はこの他にマフラー、手袋、日傘、アームカバーなどを着用して登校できるようにすることも校則の中に盛り込んだ。

そこには制約のある中でも生徒のおしゃれの幅を広げようとする思いやりや身体的な問題を抱える生徒がある程度自由に服装を選べるようにする気づかいが隠れている。

しかし、外部から来た校長の提案に一部職員が猛反発。

そもそも生徒は本校の厳しさを知って入学してきているはず。一度校則を緩めてしまうと際限が無くなるのでは。うちの生徒に許容範囲を自分で見極めるのは難しいのだから学校側が示してやるべき……などの反対意見が上がってきた。

挙句の果てには「多数決を取ってください!」とヒステリックに声を上げる職員まで。

こうした中でも著者は、「校則は校長である私が決めます」と意志を曲げずに断行。

すると、蓋を開けてみれば半数以上の教員は校則改定に賛成しており、生徒からも「最近の海商はいろいろ変わって学校に行くのが楽しくなった」という意見が寄せられるように。

こうして、素人校長が起こしたささやかな、けれどこれまで誰も成し得なかった改革は、多くの人に歓迎されながら受け入れられていくのだった。

校長先生の仕事②〜教員の人事〜

校長の仕事のひとつに、教員の採用や人事に携わる事柄がある。

毎年一月になると教育人事課は校長から教職員の人事異動に関する意見を聞き、その内容をもとに各校へ正規職員の配置を行う。

しかしこれはあくまでも正規職員に限った話であり、非正規職員については校長がどこからか人材を探してこなければならない。これが大変な仕事なのだという。

それならば、そもそも正規の職員の採用数を増やしておけばいいのではないかという意見も当然上がる。しかし、それは不可能なのだという。

実は学校に配置される教職員の人数は生徒の数に応じてその人数が法律によって定められている。少子化により子どもの数が年々減少し続けている昨今、現状の生徒数に応じて正規職員を採用すると、将来生徒数が減少した場合に配置できる教員数が法律によって減らされる。

つまり、その際過剰になった人数分、職員を解雇しなければならなくなるのだ。

著者の赴任中、海斗商業高校では体育、音楽、美術、書道の4人が臨時教員または非常勤講師だった。

そんな中、書道を担当していた臨時教員が海斗商業高校を離れることとなる。

三月になると教育人事課から異動の内示が出たが、書道についてはやはり正規職員の採用はなく、著者は新たに書道担当の教員を探す必要に駆られた。

教育人事課から共有を受けた非常勤講師希望者の名簿をもとに一人ずつ順に連絡をかけていくも、一人二人と断られ、一週間が過ぎた頃、五人目でやっと受諾してもらえることに。

著者のケースでは問題なく職員が見つかったものの、他校の校長も同様の苦労をしているという。

とくに英語の非常勤講師はその母数自体が少なく、年度末ぎりぎりまで受諾を得られなかったある学校では英語塾の講師に臨時の教員免許を発行して採用し、なんとか新年度に間に合わせたこともあるというのだから驚きだ。

※臨時の教員免許:普通免許状所有者を採用できない場合に限り、例外的に授与する「助教諭」の免許状のことを指す。

From Summary ONLINE

読書の醍醐味のひとつに「自分ではできない体験を味わうことができる」というものがあるが、本書はまさに校長先生という謎めいた職業を追体験することができる内容となっている。

また、考えの異なる教員同士のコミュニケーションや腹の探り合いが生々しく描かれており、読者一人ひとりが学校における教員の在り方を考えるきっかけにもなる一冊だ。

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