インフォメーション
| 題名 | 先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち |
| 著者 | 金間 大介 |
| 出版社 | 東洋経済新報社 |
| 出版日 | 2022年3月 |
| 価格 | 1,650円(税込) |
ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい……。今、こんな若者が激増している。
・「成功した人もしない人も平等にしてください」
・選択の決め手はインフルエンサー
・「浮いたらどうしようといつも考えてます」
・LINEグループで育まれた世界観
・もう「意識高い系」とすら言わない
・上司からの質問を同期に相談する
・自分に自信はないけど社会貢献はしたい
令和の時代の重大異変を、イノベーションとモチベーションの研究家が徹底分析!
<概要>
ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい。若者に起きている重大異変を、イノベーションとモチベーションの研究家が分析。
引用:東洋経済新報社
ポイント
- 現在の大学生の多くは自己肯定感が低く、その心理状態のまま人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる。つまり、ほめられることは、そのまま自分への「圧」になるのだ。
この「ほめ」=「圧」という図式は、いい子症候群の大きな特徴である。
- 現在は、横並び意識を強く持つ若者が多く、自分だけが多く与えられることに違和感を抱く。最も公正なのは平等分配だと考え、強制的に差をつけられることは、落ち着かず、人目が気になる負の要素でしかない。
- SNSの情報は、自分で深く考えて決断しなくてもいい。「みんなが使っているから」「なんとなく良さそうだから」という感覚で選べるため、心理的なストレスが少ないのである。現在の若者は、それほどまでに「自分で決めること」に強い負担を感じやすいのだ。
サマリー
はじめに
世間では今の若者のことを「素直でいい子」「まじめでいい子」と評価しているが、同時に、「何を考えているかよくわからない」ともいう。
実は、これらは別々の若者のことではなく、1人の若者を違う角度から見ただけなのである。
・周りと仲良くでき、協調性がある
・学校や職場では横並びが基本
・言われたことはやるけれど、それ以上のことはやらない
・自己肯定感が低い
・競争は嫌い
など、本書では、今の若者のこうした行動原理や心理的特徴を「いい子症候群」と定義している。
「ほめ」は「圧」
著者は、どちらかというと学生をほめる方である。
モチベーションの研究者という立場から、どのようにほめれば効果的なのかということも知っているため、その知識を少し活用しているのだ。
ただ、10年ほど前、講義のあとに学生に怒られたことがある。
それが、本書のタイトルでもある「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」である。
これはどういう心理なのだろうかと、著者は自身で何度も検討を重ねた。
結果、「人前でほめるくらいなら、何もいわないでほしい」と願う学生の背景には、2つの心理状態が関係していることがわかった。
1、自分に自信がないことによるギャップ
現在の大学生の多くは自己肯定感が低く、その心理状態のまま人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる。
つまり、ほめられることは、そのまま自分への「圧」になるのだ。
この「ほめ」=「圧」という図式は、いい子症候群の大きな特徴なのである。
2、ほめられることで、周りの人に自分を強く意識されるのが怖い
ほめられて嬉しいと感じる気持ちはあるが、それ以上に、目立つことに対する抵抗感の方が大きい。
しかし、彼らにも承認欲求はあるので、人前ではないところでほめられることは、原則として好意的に受け止めるのである。
なぜ若者は競争を嫌うのか
この問題の背景には、「みんな同じであるべき」という考え方が存在する。
現在は、横並び意識を強く持つ若者が多く、自分だけが多く与えられることに違和感を抱くのだ。
最も公正なのは平等分配だと考え、強制的に差をつけられることは、落ち着かず、人目が気になる負の要素でしかない。
このような傾向は、単にみんなで何かを一緒に食べるといったシチュエーションでも頻繁に現れる。
大半の大学生は、大皿料理が苦手である。
どうしても、きれいに均等分配できないからだ。
コストコで巨大なホール型ティラミスを買い、それを11人でシェアするなどの場面では大騒ぎである。
こうなる理由として、いい子症候群の若者たちは、とにかく差がつくことが苦手であり、特に「自分だけが利益を得る」という状態に過敏に反応するのである。
若者がSNSを重視する理由
今の若者は、なぜここまでSNSの情報を重視するのだろうか。
テレビや新聞などのマスメディアは、一方的に情報を発信することが基本である。
そのため、受け手は「本当に自分に合っているのか」「信用できるのか」を、自分で判断しなければならない。
一方、SNSでは、一般の消費者の感想やインフルエンサーの日常的な発信を見ることができる。
そこには強い押しつけ感が少ないため、自然な感覚で情報を受け取れるのだ。
つまり、SNSの情報は、自分で深く考えて決断しなくてもいい。
「みんなが使っているから」「なんとなく良さそうだから」という感覚で選べるため、心理的なストレスが少ないのである。
現在の若者は、それほどまでに「自分で決めること」に強い負担を感じやすいのだ。
いい子症候群の若者たちへ
明るく前向きに生きることも、目立たず騒がず静かに生きることも、完全に個人の自由である。
ただ、高校生や大学生、あるいは20代前半の若者に対しては、一度だけでも「その選択で本当によいのか」を考えてみるべきだと著者は述べている。
もし静かに過ごすことを選んだ場合、この先、自分自身のことにもかかわらず、自分で選んだり考えたりする機会が、極端に少なくなっていく可能性がある。
自分で人生を決めないということは、別の誰かや環境によって、人生の方向性が決められていくということだ。
そして、その状態を「安定」や「普通」と認識するのである。
「特別なことは望まない。毎日平穏に過ごせれば十分。普通でいい」、そうした普通への憧れは、多くの若者に共通している。
しかし著者は、その「平穏」や「普通」は、今の日本では最上級の待遇であると指摘する。
もし周囲に、そのような穏やかな生活を実現している人がいるなら、それは運に恵まれているか、あるいは見えないところで大きな努力や苦労を積み重ねてきた人なのである。
仕事中に普通の時間などない。
現場では、次々に問題や予想外の出来事が起こる。
その積み重ねは、少しずつ人の心を消耗させていくのだ。
さらに、その心の不安定が、先に平等としたはずの睡眠時間や休日にまで影響を及ぼす。
そして、「なぜこんな状況になってしまったのか」という自身の後悔も、その中に含まれてくるだろう。
著者は、「その後悔は非常に深く、苦しいものになり得る。だからこそ、若いうちにもう一度、自分の生き方について考えてみてほしい」と語るのである。
From Summary ONLINE
本書は、現代の若者たちが抱える「目立ちたくない」「浮きたくない」という強い心理を、データで読み取り、その背景にある社会構造を分析したものである。
「いい子症候群」とは、周囲から嫌われないように空気を読み、失敗や対立を極端に避け、目立つことを恐れる傾向のことをいう。
著者はSNS社会の影響にも触れており、常に他人と比較される環境の中で、自分の意見を強く主張できず、挑戦を避け、無難な選択ばかりをする若者が増えていると指摘する。
「最近の若者は消極的だ」と単純に片づけるのではなく、彼らがどのような不安やプレッシャーを抱えながら生きているのかを想像しながら、その背景にも目を向けてほしい。
自分らしく生きることの難しさや、他者からの評価に影響されやすい現代社会について、改めて考えさせられる一冊である。