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【保身の経済学】

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インフォメーション

題名保身の経済学
著者森永 卓郎
出版社発行:三五館シンシャ 発売:フォレスト出版
出版日2025年4月
価格1,650円(税込)

 

『ザイム真理教』『書いてはいけない』『がん闘病日記』…累計78万部突破の森永卓郎シリーズ、堂々終幕! 
2025年に入り、2024年中はなんとか小康状態を保っていたがんが、腹部に転移していることが確認された。私は自らに残された時間をはっきりと意識するようになった。
ただ、世の中は遅々として変わらない。むしろ保身の姿勢は、あらゆる分野で拡大している。それが本書を執筆しようと考えた最大の動機だ。

本質を追究するのではなく、目先の問題が発生しないようトラブルの回避に専念する。それこそが〝保身〟だ。読者のまわりにも、自らの処遇や地位を守るために、問題を先送りしようとする人がたくさんいるかもしれない。彼らのそうした行動こそが、私は日本社会を低迷させる大きな原因になっていると考えている。

引用:フォレスト出版

ポイント

  • 波風を立てないように自身の安全を最優先にすることを保身と言う。
  • どの業界にも保身が蔓延しており、問題を先送りすることが結果的に日本社会の低迷に繋がっている。
  • 著者は、保身社会を脱却すべく、できる範囲で保身を一掃し、次世代の若者に新しい社会のグランドデザインを任せるべきだと唱えている。

サマリー

音声で聴く

はじめに

保身とは、「本質を追求するのではなく、目先の問題が発生しないようトラブルの回避に専念すること」と著者は定義づけている。

昨今、差別を排除しようとテレビやラジオで放送禁止用語に指定されている言葉が増えてきた。

差別は徹底的に排除すべきだと著者は伝えつつ、果たしてそれが寄与しているのか疑問を投げかけている。

本来、差別が生まれた背景からどのように解消できるかまでしっかり調査し、報道するべきだと言う。

しかし、差別の話題に下手に触れると抗議を受ける可能性があり、なるべく波風立てないように触れないことが最良策となってしまっている。

このような行動は、メディアだけに限らず、企業や行政、政治にも蔓延っている。

自身の地位を守るために保身に走ることが、日本社会の低迷に繋がっていると著者は指摘している。

教員不足の理由

2023年度の公立小学校の採用試験の受験者数は、10年前に比べて半減している。

以前までは、教員を目指す人が多く、教員免許を取得しても採用されない人が多くいた。

その人達は、臨時教員や非常勤講師として働きつつ、正教員の休業の代役のために待機していた。

今は、この「待機」する人自体も減ってしまい、教員不足が浮き彫りになった。

著者は教員になる人が減った理由として、労働時間が増えてブラック労働化したことが最大の理由だと考えている。

しかし、1人の教員が持つクラスの人数は昔に比べて少なくなっているはずなのに、なぜブラック化しているのか。

それは、文部科学省が教員の仕事をマニュアル化し、作業の実施状況をチェックするための膨大な報告をさせるようにしたことだと、著者は述べている。

教育のマニュアル化は、小中学校に限らず、自由度の高かった大学にまで押し寄せてきている。

これまでは簡単に記せばよかったのが、受講のルールや内容、スケジュールを細かく書かなければいけない。

文科省のチェックが入る事項が他にも多々あり、事務作業に追われ、教育や研究に使う時間がなくなってしまっている。

本来、文部科学省が取り組むべきことは、大学の質をあげようと意味のないルールを作ることではない。

これも保身のためで、教育の質を上げる努力をアピールすることで仕事しているように見せかけ、結果的に教育の質が低下していると著者は考えている。

会社の実態

日本の会社では、相当ひどいことをしない限りはクビになることはない。

一度正社員として採用すれば、クビにしたり、賃金を下げることもできない。

特に中高年社員の転職経験のない人に比べて、転職経験のある人の給与は約半分になる。

賃金の大幅な低下を避けたい中高年社員が取る行動は、命令に従うことである。

役員や上司からの命令に反論すれば、左遷されるか冷遇されることはまぬがれない。

「休まず、遅れず、働かず」が、職場における保身の姿なのだと言う。

著者が三和総研に中途入社した時も、中は軍隊的な組織であったそうだ。

銀行からの出向者で形成されていたが、金融に詳しい人よりも上司の命令に従う根性を持った人たちが多かった。

上司の命令が間違っていても、何の役にも立たないような仕事を振られても、研究員は全力で遂行する。

ブルシット・ジョブを続けるのも保身のためなのである。

著者は経営の仕組みを変えるべく、人事評価制度の大改革に踏み切った。

その結果、研究員はブルシット・ジョブを続けなくて良くなり、自身のやりたい研究に打ち込めるようになったことで仕事の効率も上がった。

三和総研は、何度かの合併を経て社名が変更になったが、政策研究部門を維持し続ける日本最大のシンクタンクとなっている。

保身がもたらす影響

保身に染まった経済社会を長く生きなければならない若者たちは、ブルシット・ジョブにより心身ともに疲弊している。

仕事はマニュアル化し、企業の歯車として働き続けなければならない。

著者は、若者にとっての幸せが休みの日に布団から出ずにスマホをいじっている時と聞いてショックを受けた。

SNSでストレスを緩和し、ライブやフェスなど楽しい時間を過ごすためにはお金を消費しなければならない。

毎日のブルシット・ジョブで疲労困憊の若者には、この状況を改善するための余力は残っていない。

このままでは貧乏になり、老後を過ごせないと危惧している若者のほとんどが資金作りのために「投資」を始めている。

政府も新NISAを活用した投資を推奨している。

しかし、お金が勝手に増えることはないと著者は指摘する。

金融商品の取引のほとんどが投機で行われており、今発生しているバブルも後に崩壊する可能性があると述べている。

そうなれば株価は戻らず、老後を支えてくれると信じた投資も溶けてなくなる。

結局残るのは、ブルシット・ジョブなのである。

終わりに

著者は、2025年1月時点でグレート・リセットが起きると考えていた。

今までの保身の積み重ねによる問題は解決されることはなく、社会がいつ崩れ落ちてもおかしくなくない状態になった。

現状を維持するよりも、グレート・リセット後の経済社会のベースを作る方が大事だと言う。

また、これまでのグローバル資本主義と真逆の方向性になると考えている。

①グローバルからローカルへ

②大規模から小規模へ

③中央集権から分権へ

④大都市一極集中から地方分散へ

ガンディーが提唱した「近隣の原理」に沿った経済社会がグレート・リセット後の社会だと著者はイメージしている。

ただ、新しい経済社会のグランドデザインは、その時代を生きる若者が自由に描き担うことが良いのではないかと強調している。

そうなるためにも、保身社会を一掃することが今の我々がすべきことだと締めくくっている。

From Summary ONLINE

上記の他に、「金融村の保身」「大手メディアの保身」「ザイム真理教の保身」「立憲民主党の保身」「官僚の保身」がある。

今の社会がいかに保身に染まっているかが詳しく記されている。

これからの社会をより良いものにするには、何をしていくべきか、どのように考えれば良いか、著者の強いメッセージが詰まった本書を手にとってみてはいかがだろうか。

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