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【市長たじたじ日記】

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目次

インフォメーション

題名市長たじたじ日記
著者清水 聖士
出版社発行 三五館シンシャ/発売 フォレスト出版
出版日2025年7月
価格1,430円(税込)

「つぶしのきかない仕事」
市長がぼやく、
選挙の内幕、役所の裏側
――当選と落選のはざまで

落選により政治家としてはひと区切りをつけたつもりだ。だから、もう有権者にも、政界にも、遠慮も忖度もない。怖いものは何もないのだ。
本書が面白いかどうかは読者のみなさんのご判断にゆだねるしかないが、きれいごとを抜きに書いたことだけは約束できる。
――選挙の内幕も、役所の裏側も、すべて私が実際に体験した事実である。

引用:フォレスト出版

ポイント

  • 本書は5期19年の長期政権を担った著者が、知られざる市長の激務と日常、そして実は人並み以上に気が弱いという意外な素顔を赤裸々に明かす。
  • 高額納税者である大谷翔平の海外移籍が決まった時は、活躍が広がることに嬉しさを覚えつつも、市長としては住民票を残して欲しいと画策したが、ボツとなった。

サマリー

音声で聴く

はじめに

2002年に千葉県鎌ヶ谷市の市長に就任し、5期19年に渡って務めた著者の清水聖士さん。

本書では、2021年に衆議院選挙に出馬したが落選し、その後職を失うところまでを赤裸々に語っている。

ふつうの人と同じように喜怒哀楽があり、人並み以上に気が弱いという人間味あふれた市長が実際に体験した出来事が記されている。

「市長も自分たちに近い存在なんだな」「政治と生活はつながっているんだ」

政治や選挙を身近に感じてもらうことを目的としている。

市長の仕事

市長の1日の流れ

登庁は午前9時15分で、午前中は新聞から政治経済や千葉県、千葉県他市の情勢を把握することから始まり、相談や決済を待つ職員の対応にあたる。

午後は議会が始まり、3時間強で終了したら退庁の時間となるわけだが、市長にとってはここからがスタートである。

会合に出席した後、未決済の書類にハンコを押すために市役所に戻り、処理を終える頃には午後11時半となる。

帰宅は日付を超える事もあり、体力と集中力を要するタフな仕事であると主張している。

プロ野球と鎌ヶ谷市

プロ野球球団・日本ハムファイターズの2軍本拠地が鎌ヶ谷市にあることをご存じだろうか。

スタジアム内には、室内練習場と若手選手が入寮する勇翔寮が併設されている。

新入団選手は数年、勇翔寮に住まなければならず、住民票も鎌ヶ谷市に移すことが条件となっていて、転入届を直接市長に手渡すというイベントが開催されている。

今までに、名だたる選手たちが入団セレモニーに参加してきた。

特に大谷選手の活躍や知名度の高さは、税収に数字として表れ、街の活性化に繋がった。

大谷選手の住民票が鎌ヶ谷市にあるので所得の一部は住民税として納税されるため、高額納税者の1人であった。

海外移籍が決まり、活躍が広がることに嬉しさを覚えつつも、市長としては住民票を残して欲しいと画策したが、ボツとなった。

大谷選手に感謝の言葉を伝える時も、住民票を残してもらえないかと喉まで出かかったが、激励の言葉でお茶を濁したと振り返っている。

落下傘候補の当選

著者は、伊藤忠商事に勤めた後、外務省へ転職。

在インド日本大使館の書記官として勤務し、市長選に出馬するために帰国した。

元々広島出身のため、落下傘候補と言うことで批判も強く浴び、心身に支障をきたしながらも無事に当選した。

外務省に勤めていたものの、地方行政の知識には乏しく、職員からは「何も知らないのか」というような目線を感じたと言う。

サポート役や職員に質問をしたり、資料を読み込むなど必死に勉強して向き合った。

より味方についてくれる人材として候補に上げた財政課長を、著者としては自分の右腕にしたいと思った。

ただ、課長から助役に上がるには本来段階があり、急に抜擢することは職場の士気を下げることにもなり得ると感じ、徐々に遇することにした。

それ以降、2期目の市長選前も最初の選挙同様に食欲の減少や睡眠障害に陥ったが、徐々に昇進し右腕として信頼している彼の助言により回復した。

睡眠障害も治り、精神構造として非常にシンプルにできているらしいと自虐している。

国政に挑戦

周りからの推薦

市長任期を5期務め、6期目のための選挙に差し掛かるところで、県議から衆院選の出馬を勧められた。

とある自民党のA衆議員の立て続けの不祥事により辞めるのではないかと噂され、その代わりに著者を担ごうとする空気が出てきたのだ。

著者も内心はやる気に満ち溢れていて、また自民党県議たちからの強い推薦により乗り気になっていた。

市長5期で得た経験を国政に活かし、有権者が政治はもっと身近な存在なのだと感じられるような政治がしたいと純粋に本気で思っていたと当時を語った。

風向きが変わる

辞めるのではないかと噂されていた議員がなかなか辞職をしない間に、日本維新の会から声がかかった。

幹部からの「清水さんのような”大物”に是非うちから出馬することをご検討いただきたい」の特に”大物”と言う言葉に自尊心はうずき、最初に話をくれた自民党との間で揺れに揺れた。

選挙区の条件からして自民党の方が良かったが、A衆議員がなかなか辞めず次のステップへ進まないことから日本維新の会から出馬することに決めた。

その直後に想定外の事態となり、A衆議員も辞め、自民党の候補枠が空くことになるが既に決めてしまっているため、今更自民党からの出馬は無理だった。

2021年6月に市長を辞めた。

終わり悪ければ全て悪し

衆議院選では無反応で手応えがないまま、落選となった。

それは辞めた時期が悪かったからだった。

コロナ真っ最中でワクチン予約などの問題があったにも関わらず、自分の衆議院選挙を優先したと捉えられたからであった。

市民からは対面でののしられ、辞め方が相当悪かったのだと察した。

人生初の落選にメンタルはやられ、食事を摂る気にもならず、廃人のような生活を送った。

「終わり良ければすべて良し」という言葉があるが、市長の終わり方を誤ったために築き上げてきた評判や人間関係を自ら失ったのだ。

「終わり悪ければ全て悪し」

恩を受けた人には恩を返すことが大事なことだと身に染みて感じたと言う。

終わりに

落選後は、日本維新の会の千葉13区の支部長を務め、それも辞した後は無所属となった。

知人からの声かけにより、大学の客員教授として仕事を始めた。

落選してから4年弱経つが、今でも後悔の念に押しつぶされるようになることがあるそうだ。

だからこそ、どのように生きていくかを考えることがこれからに活きると言う。

政治家としての自分に区切りをつけ、”人間”としての自分のリスタートを切る覚悟。

市長という権力と肩書を持った1人の人間の成功と挫折を通じて、人生においての選択と責任について考えさせられる一冊である。

From Summary ONLINE

市長の等身大を語った本はそう多くはない。

私たちと同じ人間で、分からないことは一生懸命勉強し、褒められれば嬉しいし、罵倒されたら落ち込む。

政治は同じ人間によって行われている。

本書は、市長や選挙が身近な存在であることに気づかせてくれる。

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