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【仕組みという名の檻の壊し方】

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インフォメーション

題名仕組みという名の檻の壊し方
著者南原 竜樹
出版社フローラル出版(日本経営センター)
出版日2025年7月
価格2,178円(税込)

未来を生きる人々の姿を通して、「真面目の檻」「空気の檻」「前例主義の檻」「既得権益の檻」など私たちを無力にし、思考停止させているものの正体を暴く!

身動きの取れない彼らが、南原竜樹氏との出会いをきっかけに『檻』の存在と
その壊し方である「9つの知見」を知り、次々と打ち破っていく痛快ストーリー!

あなたも作中の彼らのように、能動的に行動すれば、きっと個人や社会、
さらには利権や保身にまみれた世界を根底からひっくり返すことができるはず!

引用:フローラル出版

ポイント

  • 銀行員・北見夢は、銀行の不祥事をきっかけに、突然解雇を告げられた。東京のメガバンクに勤めることは、夢にとってひとつのゴールであり、成功の証であった。それが「安泰」だと信じて疑わなかった人生は、あまりにも突然、崩れ去ったのである。
  • テクノロジーを活用することは、経験や勘を「補う」だけでなく、まったく新しい視点や可能性を「提供する」ものである。未来を見据えた、新しい一歩を踏み出すための強力な武器にもなるのだ。

サマリー

音声で聴く

メガバンクでもAI離職?

人が持つ正常性バイアスという心理は、いつの時代でも強力である。

社会全体が低迷し、先行きが不安であるとわかっていても、「自分だけは、このままでいいだろう」と、現状維持を選んでしまいがちだ。

その日、夢は焼き鳥屋のカウンターで酔いつぶれていた。

メガバンクに勤める銀行員・北見夢は、銀行の不祥事をきっかけに、突然解雇を告げられたのである。

理由は、彼女が担当していた業務を今後AIに置き換え、コスト削減と業務効率化を図るためだという。

東京のメガバンクに勤めることは、夢にとってひとつのゴールであり、成功の証であった。

それが「安泰」だと信じて疑わなかった人生は、あまりにも突然、崩れ去ったのである。

見かねた女将が、常連客らしい人物を紹介してくれた。

立派なスーツに身を包んだその男性は、夢に声をかけた。

「北見さん、今お仕事を探しているなら、僕の秘書として働いてみませんか?」

ひょんな出会いから、夢は新たなキャリアを踏み出すことになる。

しかもその人物は、参議院議員・南原竜樹だった。

真面目の檻の壊し方

「支援の現場」

北見夢が秘書として働き始めてから、慌ただしい日々が続いていた。

中でも、南原氏が経済産業省と共同で立ち上げた「虎の関門プロジェクト」は、画期的な起業家支援プログラムである。

今日も、自らの夢を掲げ、資金や助言を求める起業家たちが次々と訪れていた。

生田隆二(30歳)は、優しそうだが、どこか頼りなく見える青年だった。

3年ほど前から地域おこし協力隊としてブドウ農業を手伝っていたが、先代が急逝し、ほかに後継者もいなかったため、何もわからないまま農園を引き継ぐことになってしまったという。

「このままでは、せっかく譲っていただいた大切な畑を駄目にしてしまうかもしれない…」

生田の声は、不安に震えていた。

一通り丁寧に話を聞いたあと、南原氏は北見夢に、ブドウ農園の現場を直接見に行くよう指示した。

ブドウ農園の現状と課題

視察を終えた夢が作成した、生田氏に関する調査報告書は以下のとおりである。

農園の現状と課題

群馬県北神村は深刻な過疎化に直面しており、農業の担い手不足が喫緊の課題となっている。

先代コル氏の逝去後は、豊子さんという手伝いの方が来ているものの、農業経験の浅い生田氏が、ほぼ単独で農園を維持・管理する負担は大きく、経営状況も厳しいと見られる。

また、深刻な問題としてブドウの着色不良が確認されており、出荷量にも影響を及ぼしている。

考察と要望

集落の衰退は待ったなしの状況であり、生田氏の農園も瀬戸際に立たされている。

しかし生田氏には、先代コル氏が大切に守り続けてきたこの農園を絶やしたくない、そして農業を通じて村に新たな活気を取り戻したいという、強く切実な思いがある。

現状を打開するための、具体的な助言とアイデアを賜りたい。

報告書を南原氏に送信すると、すぐに返信が届いた。

「お疲れさまです。課題はよく分かりました。生田さんと予定を合わせて、こちらまで来てください」

メッセージ画面には地図と住所が表示されており、そこには、確かに「北海道」と記されていたのだ。

視野の外側へ

数日後、夢から連絡を受けた生田は、北海道旭川市のとある農園に足を運んでいた。

広さは2ヘクタール、年間の収穫は40トン近く見込まれるこの農園が成功した鍵は、いわゆる「スマート農業」の導入であった。

初心者でもAIやICTといったテクノロジーをうまく使うことで、長年の経験からくる「匠の勘」に頼ることなく、これだけの成果を出せるのである。

だが、生田は少し考え込んだ。

「スマート農業も魅力的ではありますか、僕はまだ機械に頼らず、自分の五感と体で農業の難しさや奥深さを学びたいです」

南原氏は生田をじっと見つめながらこう言った。

「生田さんのその真面目さは素晴らしいですが、真面目すぎるというのは、時に視野を狭めることにつながります」

テクノロジーの活用は、経験や勘を「補う」だけでなく、まったく新しい視点や可能性を「提供する」ものである。

未来を見据えた、新しい一歩を踏み出すための強力な武器にもなるのだ。

巨峰の着色不良が問題なら、その問題に「どう対応するか」だけでなく、「だからこそ、別の可能性にトライする」といった発想を持つことである。

生田は、もう少し未来を見据えてチャレンジすることこそが、本当の意味でコル氏の畑や想いを守ることにつながるのかもしれないと考え始めた。

未来に投資する

1週間後、生田は事業計画書を手に、南原氏の執務室を訪れた。

前回の反省を踏まえ、今回の計画では、農園再建プランとして「攻め」と「守り」の2本立てを打ち出している。

その「攻め」の施策として、スマート農業を用いて土地の適性を分析した結果、温暖化の影響により、マンゴー栽培に適した環境へと変化しつつあることが分かったのだ。

「マンゴー栽培への挑戦と、ブドウ農園の再建・再生に必要な資金を得るため、改めてこの『虎の関門プロジェクト』を利用させていただきたいと考えております」

このあとも、生田は本審査へと進まなければならない。

だが、その事業計画書からは、農園を、そして村を何とかしたいという強い想いと、対象への深い愛情が確かに感じ取れた。

From Summary ONLINE

この本は、私たちが無意識のうちに従っている社会の仕組み・常識・ルールが、

実は自由を奪う「檻」になっていることを指摘し、そこから抜け出す思考法を示している。

本書に登場する北見夢は、いかに安定した職に就き、今の立場を守り、失わないかということばかり考えていた。

しかし今回、農園の再生に挑戦する生田が、自分の長所である真面目さの檻を壊しながら、全力で挑戦する姿に心を打たれる。

ピンチに直面したときこそ、新しい可能性へと視点を移し、発想を転換していくことが求められる。

そこに欠かせないのが、柔軟な思考なのだ。

著者の、「不自由なのに安心している状態こそが、最も抜け出しにくい檻」というメッセージが印象的であった。

現実的でありながら背中をそっと押してくれる、静かな勇気をもらえる一冊である。

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