インフォメーション
| 題名 | 夫婦と子ども2人、世帯年収650万円。どうしたら家が買えますか? |
| 著者 | 伊達有希子 |
| 出版社 | 大和出版 |
| 出版日 | 2025年6月 |
| 価格 | 1,870円(税込) |
子どもには十分に教育を受けさせたい、庭つきの家がほしい。そんな家族のための夢から電卓を叩いている主婦へ。節約や投資に励むだけでなく、自分の本当の望みも実現した“最高に幸福な人生”を手に入れるマネーブランの方法
引用:大和出版
ポイント
- 著者が強調するのは、経済的な安定と将来にわたる安心を得るための第一歩は「ライフプランの作成」である、ということである。
- 住宅購入は単なる憧れや勢いで決めるべきではなく、ライフプラン全体の中で慎重に位置づける必要があると著者は指摘する。
- お金を貯めることや増やすことは目的ではなく、あくまで豊かな人生を送るための手段であると位置づけられる。
サマリー
ライフプラン作成の意義と5つのステップ
本書は、夫婦と子ども2人、世帯年収650万円という家庭をモデルに、読者が共感しやすい日常をマンガで描きながら、家計の不安やライフプランの立て方をやさしく伝える一冊である。
著者はファイナンシャルプランナーとして、多くのワーキングマザーの経済的な悩みに寄り添ってきた経験を持つ。
そのなかで著者が強調するのは、経済的な安定と将来にわたる安心を得るための第一歩は「ライフプランの作成」である、ということである。
ライフプランとは、結婚、出産、子どもの教育、住宅購入、老後といった人生の節目ごとに必要となるお金を「見える化」する作業だ。
本書では、その作成のために5つのステップが提示されている。すなわち、①人生の目的や夢を明確にする、②目標設定と情報整理、③行動プランの策定、④実行、⑤振り返り、である。
著者は、これらの手順を踏むことで、単なる資金計画にとどまらず、人生の方向性そのものを定めることができると説く。
さらに著者は「ウェルビーイングな人生」という概念を提案する。
これは「心身の健康」「経済的な安心感」「生きがい」の三つが満たされ、バランスのとれた人生を指す。
したがって、ライフプランの出発点は人生の目的や夢を明確にすることであり、定期的に振り返ることで、実効性を持った計画として人生を支えるものになるのである。
家計管理と先取り貯蓄のすすめ
ライフプランを実現する基盤となるのが家計管理である。
著者は「貯蓄はウェルビーイングな人生に不可欠なもの」と位置づけ、その実践方法として「先取り貯蓄」を推奨している。
貯蓄の目安は生活費の半年から1年分であり、まず生活防衛資金を確保することが重要である。
ここで重視されるのは「支出を減らすこと」以上に「貯蓄をコントロールすること」。
すなわち、1か月生活して余った分を貯蓄に回すのではなく、収入が入った時点で貯蓄額を先に取り分け、残りで生活を調整するという発想だ。
これにより、複雑な家計簿管理に頼らずとも、シンプルかつ継続的に貯蓄習慣を根づかせることができる。
また、先取り貯蓄を実行するには家計の現状を正確に把握し、支出を見直す必要がある。
本書では使いやすい家計簿アプリの活用や、簡便な家計掌握の方法も紹介されており、家計簿を続けられない人でも取り組める工夫が示されている。
こうした実践的な工夫は、貯蓄を「我慢」ではなく「習慣」に変えていく力となる。
住宅購入をどう考えるか
著者は、住宅購入という大きなライフイベントについても具体的に助言している。
住宅購入は単なる憧れや勢いで決めるべきではなく、ライフプラン全体の中で慎重に位置づける必要があると著者は指摘する。
目安としては、ローン返済比率を年収の20〜25%以内に抑えることが望ましい。
また、住宅購入ではローン返済だけでなく、固定資産税や修繕費といった維持費用も考慮しなければならない。
世帯年収650万円の家庭であっても、先取り貯蓄で余裕を持たせれば無理のない範囲でマイホーム取得は可能である。
しかし、将来のライフイベントの見通しが立たない場合は「買わない」という選択肢も十分あり得ると著者は説く。
賃貸には家賃の安定性という利点があり、焦って購入する必要はないからだ。
具体的には、頭金として物件価格の2割を貯めてから購入することを目標とし、安心して返済できる基盤を整えることを優先すべきだと強調されている。
さらに「なぜ家が欲しいのか」「家を持つことでどのような暮らしを実現したいのか」といった根本的な問いを立て、ライフプランと照らし合わせて判断することの大切さが示されている。
自己投資が人生を豊かにする
後半で著者が力を込めるのが「自己投資のすすめ」である。
お金を貯めることや増やすことは目的ではなく、あくまで豊かな人生を送るための手段であると位置づけられる。
そのために、自分の成長や幸福感を高める方向にお金を使うことが重要だと説かれているのだ。
具体例としては、資格取得やスキルアップのための学習、心身を整える休暇や趣味への支出、人脈づくりのための活動、さらには自分の外見や健康に対する投資も含まれる。
特に女性は子育て期に自分のやりたいことを後回しにしがちであるため、著者は「やりたいことリスト」を100個書き出すことを提案する。
この作業を通じて、自分自身の願望を再発見し、人生に主体性を取り戻すきっかけとなるのである。
著者が繰り返し強調するのは、家計管理とは単なる数字のやりくりではなく、「家族のこれからをどう描くか」を考える営みであるという点である。
ライフプランを通して見えてくるのは、お金の使い方や貯め方にとどまらず、時間の使い方、家族との過ごし方、自分の人生の目的そのものである。
本書は、経済的な安心感と心身の健康、生きがいを調和させた「ウェルビーイングな人生」を歩むための実践的な手引きとなっている。
From Summary ONLINE
本書は、家を買いたいけれど将来の教育費や老後資金も心配だと感じている家庭にぴったりの内容だ。
夫婦と子ども2人、世帯年収650万円という身近なモデルを通して、マンガ仕立てで描かれる内容は、多くの読者に共感を呼ぶであろう。
家計簿をつけるのが苦手で、家計管理が続かないという人にも手に取りやすい内容だ。
著者は、ライフプランの作成を通して、自分がやりたいことに時間やお金をかけられる豊かな人生を手に入れることを大事にしている。
無意識に子ども優先、家族優先で日々を過ごす母親自身の人生にも未来への希望が見える一冊である。